Pepperはじめてのおでかけ
この記事は、Qiitaの ロボット Advent Calendar 2015 20日目の記事です。
所属企業がSalesforce World Tour Tokyoに出展するにあたって
Pepperで何かできないかな?という話になり、あれやこれやとPepperプロジェクトが進んだ。
という訳で、技術的な話とはちょっと逸れてしまうけれど、企業ブースでのpepperを利用した企画から運営まで体験してみた話についてざっくりとお届けしたい。
出展ブースでPepperに何ができるか
想定される状況で、楽しんでもらえるアプリとはどんなものだろうと考えてみる事にした。
- スペースに限りがある
- ゆっくりしていってもらうのは難しい
- ダンスなど、動きの大きいものは無理
- 人が行き交う、BGMもかかる
- 人間の音声を聞き取るのは厳しいかもしれない
- お客様にpepperの声を聞き取ってもらうのも難しいかもしれない
アプリ内容決定
検討の結果、pepperが備えている人間の表情を判別する機能を利用した、笑顔判定アプリになった。
コンテスト形式になり、上位の方から抽選であっと驚く賞品をプレゼントする事になったので
当選した場合に必要な連絡先をお客様に入力していただく作業が必要になった。
その作業までpepperで行うと、沢山人が来てくれた時に流れが止まってしまうので
(そしてpepperのタブレットはタップの精度がイマイチかな?と思う事があるので)
あくまでpepperには撮影と笑顔判定をお願いして、SF保存後に、iPadから連絡先を入力してもらう流れに決定。
最終的にChoregrapheはこのような感じになった。
is_running、smile_checkなど、ところどころBOX化している。
ちゃんとしたアプリの作成は今回が初めてで、試行錯誤しながら作ったので色々間違っているかもしれないけど、詳細については今後別記事でご紹介したい。
あと、今回は条件があわずに見送りになった
「Pepperの額のカメラからイベント参加者のQRコードを読み取る」
という案は、今後もし自社でなにかする事があればやってみたい。
Pepper運搬問題
会場と会社はタクシーで5分くらいの距離なので、車を借りて自分たちで運ぶか?との意見も出たが
会社の子がサイズを調べて業者さんに運搬可能か問い合わせてくれたところ、佐川急便さんが
「Pepperですよね?最近よく運ぶんで大丈夫ですよ!」と言ってくれたそうなので、運搬はプロにお願いした。
Pepperを持ち出す可能性がある場合、最初の段ボールは処分しちゃダメ、ゼッタイ。
また、イベント会場で箱の保管場所が確保できるか確認しておくとスムーズだ。
純正ボックス収納時のpepperのサイズ感は概ね以下の通りである。
- 高さ140cm
- 横60cm
- 幅60cm
- 重さ34kg(本体29+箱5kg想定)
運用して発生した問題など
声がききとりにくい
最初から懸念事項としてあげられていた問題。
やはり少し聞き取りづらそうなお客様も散見された。
タブレットで補足の表示を行ったが、やはり喋っていると聞きたくなるのが人情なのであろう。
特にpepperが一生懸命喋っていると、人間も一生懸命聞こうとしてくれる。
周囲の環境にあわせた音量・声の高さ・速度の調整をするには、慣れが必要かなぁと思った。
pepperは顔に表情を持たないため、身振り手振りと声をなかば大げさに行う事で感情を表現する必要があるので
聞き取りやすさを考慮しつつも、速度や音声の高低・イントネーションで抑揚を表現したり、身振り手振りを作っていったりという作業が一番難航した。
なにしろ実機がないと確認できないので、家で作業する訳にもいかないので大変だった。
カメラの位置がわかりづらい
「タブレットにリアルタイムでカメラに映っている画像を表示する」という案もあったのだが、
・タブレットに気を取られてしまうのではないか
・どんな写真が撮られたかのワクワク感が損なわれる
・そんな開発日数ないじゃないの…あなた…。
などの問題があり、今回はタブレットで以下のような表示を行ってみた。
これでも迷う人は多少いらしたので、もう少し顔のアップで画像を作成するべきであったと反省。
オペレーターがカメラの位置を促すなど、運用面で対応した。
しかし、カメラの位置がわかっても、自分の顔がちゃんと映っているのか確認できないので
やはりリアルタイム表示をしたほうがよかったのかもしれないわね…あなた…。
ごあいさつは手短かに
「ようこそ!企画に参加していただけますか?」という旨の挨拶をした後、お客様にタブレットから参加同意のボタンをタップしてもらって
「撮影しますよ〜」と言って撮影する流れで作成したけれど、実際に会場で沢山の人が参加してくださる中稼働してみると、挨拶が冗長であると感じた。
pepperの前に来ている時点で、オペレーターが企画趣旨については説明してくれているので
思い切って最初の挨拶をカットし、参加同意ボタンをタップしてもらった後に
「ご参加ありがとうございます!それでは撮影しますね!」と、簡単なご挨拶+撮影カウントをするように、会場でプログラムを変更した。
たまに限界を迎える
こういったイベント会場は活気にあふれているので、そこそこ熱気もある。
pepperは熱に弱い生物なので注意しないといけない。pepper業界用語で言う「hot pepper状態」というやつである。知らないけど。多分言うんじゃないかな。
今回、他企業さんのブースでもpepperが数台稼働していたが、時折「pepper動きません」という悲痛な知らせが聞こえてきた。
pepperがメインの企画でpepperが倒れてしまうと、どうにもこうにも一刻にも早く復旧を!という担当者へのプレッシャーが凄まじいのである。
一度、各企業のpepper担当者同士で
「うちの子、放っておくと壁見て一人で話してるの〜」
「超わかる〜」
とかいうpepperあるあるを語り合う女子会ならぬ「ペ担会」でも開催したい所である。
うちのpepperも、10:00〜19:00の稼働時間中に2回ほど動かなくなった。頑張った方だと思う。
でもせっかく社長が見に来てくれた時にフリーズしたのはどうかと思う。
パッケージ化うまくいかない
「ユーザーからのリクエストで起動」みたいな項目にチェックを入れるとタブレットのアプリ一覧に表示される、という説明通りにやってみて
簡単なsayボックスだけのアプリで実験してみた時にはうまくいったけど、今回のアプリ内容でやってみたらうまくいかなかった。
choregrapheから本体にインストールし、ロボットアプリの一覧からアプリを実行して運用した。
オートノマスライフが厄介
今回はchoregrapheから一度オートノマスライフを切って、コンテストアプリだけを実行していた。
写真を撮っていない時はフリートークができればよかったのだが、オートノマスライフをオンにしておくと、アプリ起動中でも平気で別の事を喋り始めてしまうのでこのような対応に。
もう少しオートノマスライフについて調べてみないといけない。アプリづくりの道は険しい。
一日を終えての感想
pepperがおじぎをすると、みんなおじぎを返してくれる
洋の東西を問わず、結構な確率で返してくれる。
あとは握手を求めてくれる方もいらしたので、アルデバラン社はすみやかにpepperの手の内側にもセンサーを設けて欲しい。
人間よりも、pepperに笑いかける方が緊張しないのかもしれない
初対面の人間に突然「ねえ、笑って?」と言われても、「こういう時、どういう顔したらいいかわからないの…」と、緊張した笑顔になってしまう場合が多いと思うが
初対面のpepperには、ステキな笑顔を見せてくださる方が多かったように思われる。
pepperに対峙した際の初動として、子供はタブレット一直線になるとアルデバラン・アトリエのスタッフさんが仰っていたが
私が見る限りでは、大人はだいたい頭をなでてくれる方が多い。
どうやら、多くの大人はpepperに対して子供を相手にした際のような対応をしてくれるようだ。
たまには外のお仕事もいいものだ
普段、外出することなく室内でプログラミングをしているのが主な業務なので
沢山人がやってくる場所でうまくお話できるか不安だったけれど、
ユーザーが自分の作ったプログラムで楽しんでくれている姿を見て、嬉しかったり改善点が見つかったりするのはいい経験になった。
pepperにしかできないこととは
Pepper App Challenge & Pepper Innovation Challenge決勝を観覧して以来
「pepperである必要性」という事について考えていた。
自分の中でまだ明確な答えは出ていないが、たくさんの人がpepperと触れ合っている姿を見て思ったのは
pepperの一番いいところというのは「スペックに対してデフォルトのキャラクターがゆるい」ところなのではないかと思う。
もちろん使用者のさじ加減でお硬い感じにもできるけど、最初にフワッとしたキャラで世の中に現れた「ゆるさ」
工業製品として人の生活を豊かにするべく生まれてきたロボットだけど、お洗濯も、お皿洗いもできないし、自動的に壁をよけながら床をお掃除してくれる事もない。
様々なセンサーを内蔵していながら、その性能がコミュニケーションに特化しているというのはおもしろい。
ドラえもんがただ便利な道具を出してくれるだけなら、のび太くんとの間に友情は生まれなかったと思うので、この調子でがんばってほしい。
pepperは握力200gくらいらしいので物理的にものは動かせないけど、人の心は動かしてくれる。
みたいなちょっといいこと書いて締めの言葉にかえさせていただく。